第1回
変革期におきるズレ
~人と組織がかみ合わない理由~
制度を整え、仕組みを導入したのに、なぜか社員が動かない。意欲が高まらない──。
そんな経験はありませんか?
事業承継や組織の急拡大、事業変革のタイミングでは、「人」と「組織」の間に“見えないズレ”が生じやすくなります。
本シリーズ『人が育ち、組織が動く人事制度づくり』では、制度設計と運用の本質を12回にわたってお届けします。第1回では、その出発点として「ズレ」の正体を探ります。
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経営者の中には、「人事制度を整えれば、社員はついてくるはずだ」と考える方が少なくありません。
しかし、実際には「制度を導入しても期待した変化が起きない」「社員との距離が広がったように感じる」という声が後を絶ちません。
この“ズレ”の多くは、制度そのものの欠陥ではなく、変革期に生じる「関係性」と「構造」のひずみによって引き起こされます。
たとえば、事業承継の現場では、後継者が「自分のカラーを出そう」と制度改革を進めた結果、ベテラン社員が反発し、空気がぎくしゃくしてしまう。
あるいは、急成長した企業が人事制度を急ぎ整備する中で、「評価される基準が変わった」「何をすれば認められるのか分からない」と現場の混乱を招く。
こうした例は決して珍しくありません。なぜこうした“ズレ”が起きるのでしょうか?
それは、制度が「理屈」としては正しくとも、「関係性」の文脈を踏まえて設計・導入されていないからです。
組織における制度とは、“構造”であり、経営の意図や価値観”を形にした“メッセージ”でもあります。
その意図が社員に伝わらなければ、「管理されるもの」「押しつけられたもの」として受け取られてしまいます。
人事制度は、経営理念や戦略を社員に届け、行動変容を促す“翻訳装置”でもあります。この翻訳が失敗すると、制度は“重荷”となって、かえって組織の動きを鈍らせます。
本シリーズでは、「人事制度=仕組み」と「人と組織=共感や信頼関係」とのつながりに注目し、「人が育ち、組織が動く人事制度づくり」の全体像をお伝えしていきます。
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次回は、「制度を整えても人が辞める理由」に踏み込みます。
なぜ“仕組み”だけでは人が動かないのか?その本質に迫ります。
制度設計の前に必要な「問い直し」の視点を、ぜひご覧ください。







