
前回のマメ知識でも通勤災害についてお話ししましたが、引き続き今回は「保育園へ子供を迎えに行くために、いつもの通勤経路を変更して交通事故にあった場合」の通勤災害を見ていきましょう。普段は配偶者が迎えに行くことになっているものの、所用で急遽その日だけ子供を保育園へ迎えに行く際に自動車と接触してしまった、という場合を考えます。
▎通勤災害のおさらい
通勤災害の論点として「①合理的な経路および方法」で、「②移動の経路を逸脱し又は異動を中断した場合には、逸脱又は中断の間及びその後の移動は「通勤」とはならない」ことがあります。前回は②により寄り道は基本的にダメですよ、というお話をしました。今回の状況も寄り道に該当してしまうのでしょうか…?ポイントは①です。これはその経路が「合理的な経路および方法」に該当するかが問題です。
▎合理的な経路?
行政解釈では以下のように述べられています。
他に子供を監護する者がいない共稼労働者が託児所、親せき等にあずけるためにとる経路などは、そのような立場にある労働者であれば、当然、就業のためにとらざるを得ない経路であるので、合理的な経路となるものと認められる。(基発第644)
つまり、専業主婦(主夫)に該当する方がいる場合は「他に子供を監護する者がいない」には該当せず、認められない可能性が高いといえます。反対に、共働きで普段迎えに行く方が急な仕事のために代わりに迎えに行く、というのは「他に子供を監護する者がいない」にあたり、「合理的な経路」と認められる可能性が高いといえます。
▎合理的な方法?
「合理的な方法」については
鉄道、バス等の公共交通機関を利用し、自動車、自転車等を本来の用法に従って使用する場合、徒歩の場合等、通常用いられる交通方法は、当該労働者が平常用いているか否かにかかわらず一般に合理的な方法と認められる。(基発第644)
とされています。つまり普段使用している手段だけでなく、一般的に用いられている方法であれば「合理的な方法」と認められると考えられます。ただし、著しく遠回りな経路をとることや、無免許での運転などは認められません。
▎まとめ
‣ほかに子どもを監護する者がいない
‣合理的な方法・手段である
以上の2点が「通勤災害」として認められるかのポイントになります。つまり寄り道にはあたらず、すべての経路が「通勤」とみなされるということです。実際は実態に即した判断になりますが、このポイントが有効と判断された場合は、労災として認定される可能性が高いといえるでしょう。