今年の4月1日から、労働条件通知書の記載事項が追加されました。
その内容の一部として、契約中に従事する職種(職務)と勤務地の変更の範囲を記載することが挙げられます。
上記ルールに関連する判例が4月26日に出ましたので、その判例と明示事項について今回は見ていこうと思います。
▎裁判例の判断内容について
本件事案は、技術職として雇用され、18年勤務していた職員がいました。勤務していた技術部門が廃止の方針となったため、会社が当該職員に契約時合意のない総務職へ配転命令を出し争いとなりました。
上記のような状況で、最高裁の判断を簡単にまとめると、
①職種を限定して雇用されていた従業員について
②本人の同意を得ることなく
③合意に反した配転命令をする権限はない
というものでした。なお、本判例は職務の限定がある場合についてでしたが、勤務地の限定についても同様に妥当するものと考えられます。
▎労働条件明示義務との関係
今回の改正で、労働条件明示ルールとして追加された職務・勤務地の変更範囲の明示義務に基づく契約書への記載から、①の「職務・勤務地限定合意」の存在がより認められやすくなるものと予想されます。
▎今後に与える影響
その結果、従前の形式のまま労働条件通知書を作成し、契約直後の勤務地や職務の記載のみにとどめていると、記載していた場所や職務以外への異動を従業員に伝えた際、変更を指示する権限がない為、指示に従う必要がない等と配転を拒否される等のトラブルに発展する可能性が高くなります。
上記のようなトラブルを避けるため4/1以降、労働条件通知の作成の際には、今後担当してもらう可能性のある業務や勤務地を変更の範囲としてしっかり記載することが重要になると思います。
また、厚労省の資料によりますと、従来の総合職の様に勤務地や職務の限定をしない場合や変更の範囲が判然としない場合には、現状「会社の定める業務」や「会社の定める事業所」といった形の記載で対応することも可能なようです。
メガバンクなどでも配転命令を契機に退職することが続出しているようで、働き手の勤務地等への意識も強くなっているように思われます。トラブルを未然に防ぐ意味でも契約の際には記載の確認が大切です。