2024年10月1日
同一労働同一賃金

自民党総裁選のため、各候補者が様々な政策に関する意見を表明され、労働市場に関する政策も発表されています。

その中で同一労働同一賃金について言及されていたので、今回はそれを見ていきたいと思います。

 

同一労働同一賃金とは

労働者の「職務」が同じであれば、雇用形態にかかわらず、同じ待遇とし、同じ賃金を支払うべきというルールです。

「職務」が同じであるかは、仕事内容だけではなく、責任の差や、職種変更や転勤の条件に差があるか等から判断されます。

条件が同じであれば、同じ様に扱い、違いがある場合には、その違いを超えた不合理な取扱いをしてはいけないという所まで求めています。

同一労働同一賃金で主に問題となるのは、「職務」に違いがあるとき、扱いに差を設けていた場合に、その差が待遇の性質や目的に照らして不合理では無いかという点です。

 

具体例

参考として、職務に差がある(と認定された)従業員から労働条件等の扱いの差が不合理だと訴えられ、裁判で争いとなった例を挙げます。

メトロコマース事件(R2.10.13判決)

(職務の差)

売店業務に従事する正社員は、誰かが休んだ場合の代務業務やエリアマネージャー業務がありました。また、売店業務以外への配置転換の可能性もありました

それに対し争った契約社員は、誰かが休んだ場合の代務業務やエリアマネージャー業務に従事することはなく、売店業務以外への配置転換の可能性はありませんでした。

上記の点等から、「職務」に差があると認定されました。

 

・住宅手当・

正社員に支給されていたが、契約社員には支給されていなかった

【結論】
住宅手当の目的から見て、職務内容によって住宅手当の必要性に差は生じない為、扱いに差を設けるのは不合理

 

・早出残業・

契約社員には割増率2割5分、正社員は2時間まで割増率2割7分、2時間超については3割5分増しとなっていた

【結論】
割増が払われる状況に正社員と契約社員間で差はなく、扱いに差を設けるのは不合理

 

 

日本郵便事件(R2.10.15判決)

(職務の差)

正社員は無期雇用であり、外務事務、内務事務の標準的な業務に従事し、人事異動の可能性があったが、契約社員は期間の定めのある契約で外務事務、内務事務のうち特定の業務のみに従事し、職場及び職務を限定して採用されている点等から、「職務」に差があると認定されました。

 

・扶養手当・

正社員には扶養親族の種類等に応じて支給があったが、契約社員に対しては支給されていなかった

【結論】
高裁と最高裁で判断が分かれた。

高裁においては、契約社員が原則として短期雇用を前提とすること等からすると、正社員のみに支給することも不合理ではないと判断された。

最高裁においては、「扶養手当の目的に照らせば、……、扶養親族があり、かつ、相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば、扶養手当を支給することとした趣旨が妥当する」とし、実態として有期契約の更新を繰り返していたという事情から「継続的な勤務が見込まれる」ものとして不合理だと判断された。

 

・夏季冬季休暇・

正社員は所定の期間中にそれぞれ3日まで取得できる有給の休暇が与えられたが、契約社員に対しては当該休暇が与えられなかった

【結論】
最高裁は、夏季冬季休暇の趣旨を「年次有給休暇や病気休暇とは別に労働から離れる機会を与えることにより、心身の回復を図る目的」と認定したうえで、正社員の休暇取得の可否や日数は勤続年数によらず一定であり、契約社員は繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく、業務の繁閑によらない勤務が見込まれていることから、夏季冬季休暇の趣旨は、契約社員にも妥当する為、異なる取り扱いをすることは不合理だと判断した。

 

 

9月12日の労働新聞の記事で、大阪労働局が同一労働同一賃金に関する指導を強化しており、指導件数が前年の約2倍に増加とありました。

また、厚労省も同一労働同一賃金に係る報告徴収を積極化していく方針を出しており、体感として相談も増えている様に感じます。


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