2026年9月1日
知らないと危険な労務の話~固定残業代の不適切運用がはらむリスク~| 1.固定残業代(みなし残業代)制度について |
固定残業代の制度は、実際の残業時間にかかわらず、予め決めた残業時間分に対応する残業代を毎月固定で支払う制度を言います。固定残業代の制度が適切に運用できている場合には、労使双方に次のようなメリットがあります。
企業側: 毎月の給与計算事務の負担軽減、人件費の見通しが立てやすくなる。
従業員側: 実際の残業時間が固定分より少なくても規定額が全額支給される為、効率的に働くモチベーションに繋がる。
| 2.制度が無効と判断された場合のリスク |
制度の運用が適切に行われず、固定残業代の支払いが無効と判断された場合、次のようなダメージを負う事となります。
◆残業代の「二重払い」が発生する
固定残業代として支払っていた金額が「基本給の一部(通常の労働時間の賃金)」とみなされます。その結果、過去に遡り増加した基本給をベースに再計算した未払い残業代を全額支払った事例もあります。
◆遅延損害金・付加金の支払い
未払い残業代に加え、遅延損害金(退職者からは年14.3%)や、悪質とみなされた場合は未払い額と同額の「付加金」の支払いが命じられるリスクがあります。
| 3.無効と判断される要素 |
裁判所が判断する際においては、次のような事情がある場合に無効とされます。
◼︎固定残業代が他の賃金と明確に区別されていない。
◼︎対象となる時間数と金額が明示されていない。
◼︎対象時間を超えた分の差額支給がされていない。
◼︎設定されている時間が長すぎる場合。
固定残業代制度は節税や残業代カットの手段ではなく、あくまで「計算の便宜」のための制度です。
契約書や就業規則の記載ひとつでリスクの大きさが大きく変わりますので、現在の運用に不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。



