2023年9月11日
“管理職”と“管理監督者”

多くの会社では、一定以上の役職の労働者を「管理職」として役職手当等の手当を支払う一方で残業代を支払わない、という扱いをしていると思われます。しかし会社が「管理職」と扱っている労働者を、法律上の残業代の支払い義務を免れる管理監督者」と混同している例がよく見られます。「管理職」は必ずしも「管理監督者」とは限りません。

今回は、労働基準法上労働時間・休日・休憩の制限を受けない「管理監督者」についてお話いたします。

管理監督者の基準

管理監督者」は労働基準法第41条第2号「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」と定義されています。具体的には分かりづらいですね。これは役職名にとらわれることなく、その職務概要、責任と権限、勤務様態、待遇を踏まえて実態により判断すること、としているため、行政通達や裁判例から把握する必要があります。

管理監督者をめぐる民事裁判はなんと昭和40年から存在していますが、現状では以下の3点が「管理監督者」を定義する判断基準とされています。

01.経営者と一体的な立場で仕事をしている(勤務内容、責任と権限)
02.出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていない(勤務様態)
03.その地位にふさわしい待遇がなされている(賃金等の待遇)


これらに当てはまらない人は、社内で「管理職」とされていても「管理監督者」には当たらず、残業手当や休日出勤手当が必要です。一つずつ見ていきましょう。

01.勤務内容、責任と権限
管理監督者は経営者に代わり同じ立場で仕事をする必要があり、経営者から管理監督、指揮命令に係る一定の権限をゆだねられている必要があります。会社の意思決定としての自らの裁量で行使できる権限が少なく、本社の指示や決裁に基づきその内容を部下に伝達するような場合は該当しません

また、社内での役職名称では判断されず、権限と実態がなければ管理監督者とは言えません。高度な判断を迫られたり、経営を左右するような権限を持つわけではないのであれば、「経営者と一体的な立場」ではないということです。あくまで実態によって、個別に判断する必要がありますが、通達によれば採用・解雇・人事考課・労働時間の管理について責任と権限が実質的にない場合は、管理監督者としては否定される要素とされています。

02.勤務様態
管理監督者は、時を選ばず経営上の判断や対応を求められることがあり、また労務管理においても一般社員と異なる立場に立つ必要があります。このような事情から出退勤時間は制限されておらず、自らの裁量に任されていることが必要です。遅刻や早退で給与が減らされたり人事考課で負の評価をされるような場合は、管理監督者とは言えないとされています。

03.賃金等の待遇
管理監督者は、その業務の重要性から地位、給与その他の待遇において、一般社員と比較して相応の待遇がなされていなければなりません。残業手当等を考慮するとかえって賃金が下がっているなどの事情があれば、管理監督者とはいえない要素となります。

まとめ

以上の基準に該当しないからと言って、一律に管理監督者ではないと判断することはできません。会社によってさまざまなので、個々のケースで管理監督者に当てはまるかどうかについては、非常に難しい判断が求められます。

2019年4月より、管理監督者の勤怠管理も義務化されました。労働時間の把握を管理職に対しても実施していかなければなりません。管理監督者は労働時間・休日・休憩の制限はありませんが、深夜割増賃金は支払う必要がありますし、有給休暇も一般の社員と同様に与える必要があります。特に管理監督者についての年5日の年次有給休暇義務は忘れられがちなので、年休管理簿で適切に管理しましょう。


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