稲盛和夫さんは、京セラ・KDDIを創業し、またJALを再建させた名経営者ですが、この本は、どうすれば会社経営が上手くいくのかという原理原則を、自身の経験をもとにわかりやすくまとめたものです。
私は、稲盛さんといえば「利他の心」を思い浮かべますが、確かにいい言葉と思ってはいるものの、そうは言っても、商売は「利己」の為に行っているのでしょう。と反論したくなる気持ちがありました。
しかし、この本の中で、「なるほど、そういうことか」と思わせる説明がありましたので、ご紹介します。(以下、原文のままです)
経営の原型とは「何が何でもこうありたい」「どんなことがあろうとも俺は絶対に負けんぞ」という強烈な願望、すなわち利己から発するものです。
・・・しかし利己だけが強くなってしまうと、一時的には成功しても、いずれは破綻します。だからこそ「利他」も大事で、「利己」だけを肥大化させてはいけないのです。・・・・
そして利他を目覚めさせるためには学ぶしかありません。利己は本能ですから、学ばなくてもしょっちゅう出てきますが、心の奥底に沈んでいる利他の心は意識してそれを伸ばそうとしなければ出てきません。
そのためにために学ぶことが重要で、それが「人間性を高める」ということなのです。・・・
また、稲盛さんは、この本の12か条の第1条で、「大義名分が人を動かす」と語っています。
「金儲けをしたいから事業を始めた」ということは結構ですが、従業員に懸命に働いてもらう、お客様や取引先から信頼され、愛されるには公明正大な目的がなければならないと説明しています。
商売は、社長一人で必死に働いてもできることは所詮しれており、他人の協力を得なければ進まないので、「利他の心」を持ち、「大義名分」を掲げることが必要なのでしょうね。
日本経済出版社 著者:稲盛和夫