2024年6月3日
星野リゾートの事件簿この本は、星野リゾートで起きた幾つかの実話をまとめたものですが、私は、この中の「頂上駅の雲海」が、大好きです。
これは、バブルで倒産したアルファリゾート・トマムを星野リゾートが再生に乗り出したときのことで、主人公はゴンドラの保守点検係の伊藤さんという方です。
話しの顛末は次のとおりです。
星野社長は、トマムを引き継ぐや否や、スタッフに直接、「リゾート運営の達人を目指す」「コンセプトを明確に定め、顧客満足度を上げよう」「全員が自由に意見を出そう」と自らの考えを明確に語りかけた。
それまで、売上重視・コストカットに慣れた伊藤さんは、戸惑いの連続でしたが、少しずつ星野社長の考えに慣れていきました。
そんな矢先、星野社長から、「顧客が少ない夏場の顧客満足度」というテーマを与えられました。
伊藤さんは、自分には無理だと思いながらも、「トマムの夏の魅力」をずっと頭から離れないでいると、ゴンドラ山頂から広がる雲海を見たとき、「お客様にも、この眺めを是非みせたいなあ。ここで美味しい珈琲を飲んでくつろいでほしいなあ」という思いが浮かびました。
そして仲間を巻き込み、自分達で山頂にテーブルと椅子を運び、ウェイターとなって珈琲の提供を試したところ、評判を呼び、本格的なカフェテラスが作られ、これがトマムの夏場の目玉となり、再生が一気に進みました。
社員が自ら考え、行動する会社が強い会社と思います。それには社員が心から共感できる「経営理念」と一貫した社長の姿勢が必要です。
私は「経営理念」を考えるとき、「頂上駅の雲海」を思い出します。
星野リゾートの事件簿~なぜ、お客様はもう一度来てくれたのか~ 日経トップリーダー編 著者:中沢康彦