2024年4月2日
固定残業代の注意点

新年度も近づきベアに関する労使合意のニュースもよく流れてくるようになりました。そんな中、とある会社が新卒への給与を約40万円にするといったニュースが目につきました。

このニュースよくよく調べてみると基本給20万、固定残業代17万(80時間分)、他諸手当約3万の取扱いとするというものでした。固定残業代80時間なんてブラックだ、認められるの?などと話題になっていましたので、少し見ていこうと思います。

 

固定残業代対象時間80時間は許される?(裁判例をもとに)

冒頭の例で固定残業代の対象時間が80時間という事ですが、2018年に固定残業代80時間としてその有効性を争われた裁判例があります。

その裁判例では、月80時間の固定残業代は公序良俗に反するものとして無効であると判断されました。

上記判断の理由としては次のような点が挙げられていました。


①残業は労災における過労死基準に匹敵する時間であること

②①のような長時間の残業を恒常的に予定するわけではない事を示す事情が認められない。(80時間の残業が恒常的に予定されていた。)


上記裁判では、会社の定める固定残業制は無効であると判断された結果、残業代が未払いであるとして、固定残業代も割増の基礎に含め未払い残業代、付加金の支払い(計300万円超)を命じられることとなりました。

(なお別の裁判例で②のような留保なく長時間の無効の例もあります。)

 

会社の対応策は?

裁判例の考え方からすると、裁判当時、固定残業代対象時間が80時間とされていても、恒常的にそのような長時間の残業を予定していない場合であれば、固定残業代と認められる余地がありました。

今後そのような判断が踏襲される可能性もあります。

ただ、裁判所によって判断が分かれている事や、上記裁判時から法律が変わり、上限規制も制定されていることから、固定残業代を設定する場合、三六協定の一般的な上限の45時間までを目途に設定するのがリスクヘッジの観点からは無難と考えます。

 

固定残業代制度は適切に運用すれば、会社視点では事務の削減ができ、また、人件費の大まかな見積りが把握しやすくなります。

従業員視点では、残業の有無にかかわらず一定額の支給があることから、公平性が確保され、また、業務効率化のモチベーションにも繋がります。

このようなメリットもありますので、固定残業代の運用の際には、無効と判断されないよう適正に運用するよう心掛けましょう。


ユニバー社会保険労務士・行政書士事務所


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